「週刊金曜日」8/26 860号の特集は「迷走する放射能汚染処理」でした。その中で「放射能とコメ」の問題を取り上げていたのがルポライター古川琢也氏の「主食のコメは本当に安全なのか」という記事でした。
古川氏によると、農林水産省が定めた「1キログラムあたり500 ベクレル」を超えた場合。その地域のコメの出荷は禁止されるという、あまリにも高すぎる暫定規制値の根拠となっているのは
食品衛生法に基づき今年3月17日に急遽制定された暫定規制値で、「これでは規制の上限としてはあまりに高すぎるのではないかと? 農林水産省に訊ねると、「われわれとしては、あくまで厚生労働省が定めた食品衛生法とそれに基づく暫定規制値に従っているいる立場だ」という答えが返ってきたそうです。暫定規制値を決めたのは厚生労働省であり、農林水産省はそれに従っているだけだ、というわけです。また「暫定」とは「具体的にいつからいつまでまでの期間をさしているのか、経済産業省の緊急時対応センターに訊ねたところ「統一的な基準は設けられていません」とのことで、同じ質問を原子力安全委員会事務局にしたところ「明確な定義はない」とする一方で、原子力安全委員会事務局が古川氏に提示してくれた原子力等の防災対策について」という冊子を読んでみたところ「日本の原発で事故が起きた場合、放射性物質の『放出継続時間』としては『24時間』を想定すること、つまり日本の原発で事故が起きた場合、最悪でも24時間以内には内部収束するとする考え方基づいていて、それ以後のことは何も想定されていない」ということが分かってきたとのことでした。
このことに関しては、原子力委員会の委員たちからも、「暫定」ではない「新たな規制値」決めるための「規制値の見直しを求める意見が出された」ということもあって、厚生労働省食品安全部基準審査課では、「現在、食品安全委員会に放射線汚染食品の健康安全評価に関して諮問中であり
その答申の見た上で検討する」そうです。しかし「新たな規制値が制定されるとしても、そこから厚労省の『検討』のためにまたさらなる時間が費やされその間にもコメの収穫は進み、暫定規制値をパスしたコメは市場に流通して行く」と古川氏は述べられていました。
古川氏は「霞ヶ関の各官庁が責任逃れに終始する状況にあって、消費者が検査そのものに不信感を抱くのも当然だろう。」と語られていましたが、消費者だけでなく、このような状況の中で翻弄されている生産者の農家も、原子力安全委員会や、農林水産省や、厚生労働省当局に、強い不満と不信感を抱いてしまうことになるでしょう。
p.s. ところで、チェルノブイリ直後の旧ソ連の穀類の規制値は1キログラムあたり370ベクレル、また事故後独立国になったベラルーシでは、穀類やパンの放射能規制値は、1999年以後1キログラムあたり40ベクレルです。また、NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は、日本の500ベクレルは「明らかに高い。高すぎる。コメは主食です。三食食べた場合、一日の摂取量は900グラムになるでしょうか。当然肉や野菜などの食品も食べるから、この基準のまま食べ続けれぱ内部被曝量は年間1ミリシーベルトを優に超え、2〜 3ミリシーベルトに達してしまいます。このような規制値を認めるのは、食べ物を通じて放射能汚染を全国にばら撒いているのとおなじです。少なくともこれよりひと桁以上低い数値に、すぐにでも改めるべきです。」と語っています。