今日の「東京新聞」の「こちら特報部」は、「安倍外交 世界に逆行 イスラエル接近 一因か 『一定の距離認識欠落』『平和主義貫け』」という見出しで、「『イスラム国』とみられるグループは安倍首相がイスラエルを訪問したタイミングで、日本人人質二人の殺害を警告した。首相は『イスラム国対策のニ億ドルは人道支援』と強調しているが、背景は支援金だけだろうか。国際的な批判が強まるイスラエルへの日本の急接近は、国際的にも際立っている」という前置きで、次のように語っていました。私もまったく同感です。
「イスラエルは昨夏パレスチナ自治区ガザへ軍事作戦を展開。ガザでは一般市民を中心に約二千人が死亡した。さらに停戦合意後も、バレスチナ人居住区での入植を強化している。こうしたイスラエルの強硬姿勢について、最大の同盟国である米国ですら『距離を置くことになる』(大統領報道官)と批判。国連などを舞台に、国際社会の目は厳しさを増している。ところが、安倍政権は世界の流れに逆行している。二〇一二年三月、政府はイスラエルが購入を予定する次期主力戦闘機F35の共同開発参加を表明。昨年五月には、イスラエルのネタニヤフ首相が来日。両国の国家安全保障局、防衛当局の交流促進と協力で合意した。そして、今回は首相自らイスラエルを訪問した。イスラム過激派にとり、イスラエルとは『消滅』させる対象だ。日本はかつてパレスチナ紛争について、中立性に配慮していたが、昨今の急速な親イスラエル姿勢が、今回の事件の一因になっていないか。
京都大の岡真理教授(現代アラブ文学)は『遅かれ早かれ、日本に攻撃の矛先が向けられるのは、時間の問題だった』と語る。同教授は『首相は「中東の平和と安全のためにイスラエルと協力する」と言うが、中東の不安定の根源はイスラエルの存在。その国と一緒にテロと戦うと宣言し、イスラエル向けの兵器を開発することは、イスラム国のみならず、他のイスラム過激派にも、日本人を標的にする口実を与えるようなもの』と批判する。『日本は原爆を落とされたが、復興を遂げ世界に技術を提供してきた国として、イスラム圏では好印象を持たれていた。昔の自民党の政治家は対米追随でも、イスラエルとは一定の距離を置いていた。現在、そういう認識が欠落した首相と政府がイスラム圏との信頼関係を破壊している』
一方、東京外大の青山弘之教授は(現代シリア政治)は『イスラム国にとって日本は西側陣営のソフトターゲット』と分析する。イスラム過激派をめぐっては最近、フランスの新聞社襲撃事件など、欧州を舞台に事件が相次いだ。青山教授は『イスラム国は欧州人を刺激すればキリスト教対イスラム教の構図を決定的にし、不利になると考えた。それだけに欧州人以外で、世界の耳目を集められる攻撃対象として、日本人が最適と判断したのではないか。首相の外交パフォーマンスが格好の標的なったと言える』と話す。
千葉大学の栗田禎子教授(中東現代史)は『イスラム国にとり、イスラエルは聖地エルサレムを不法に占領する異教徒集団で、イスラム圏を侵略する欧米の手先だ。その国旗を背に「テロには屈しない」と会見した安倍首相は、地域に「日本はイスラエルの仲間」と印象づけた。イスラム国の術中にはまった』とみる。では日本の中東外交はどうあるべきか。栗田教授は『イスラエルとの安全保障上の協力関係は見直すべきだし、武器輸出は誤りだ』と訴える。『パレスチナ紛争の公平な解決に貢献することが、日本外交の役割。軍事を含んだ積極的平和主義ではなく、憲法九条の平和主義を貫くべきだ。九条に基づく外交は長い目で見れば、日本の企業、国民の安全を守ることにつながる』と。